デンマーク語のカタカナ表記のコツ
デンマーク語は英語と同様、カタカナでは実際の発音を表現するのはなかなか難しいです。その大きな原因もまた英語と一緒で、下記の通りです。
1)日本語より母音の種類が多いので、どうしてもデンマーク語では違う意味を持つ音が、カタカナ表記では同じ音になってしまいます。
2)子音の場合も1)と同じですが、まぁ母音ほど大きな問題ではありません。一番大きいのが、やはりLとRの違いで、また、英語と同様BとVの違いがあります。それ以外、デンマーク語の子音は日本人にとってそんなに難しくないはずです。
3)デンマーク語では、二つ以上の子音が母音を挟まずに連続することがありますが、日本語、引いてはカタカナでは、必ず「母音・子音」というパターンしかなく、デンマーク語の「子音・子音・母音」、「子音・子音・子音・母音」はありません。
そこでカタカナを使うと、デンマーク語の子音と子音の間に「要らない母音」が入ってしまいます。これを日本語に例えると、何等かの理由で外国人が「つ」が発音できなくて、「つ」が「とす」になり、「つれば」が「とすれば」になってしまうとしましょう。完全に意味が違ってきましたね…。
さて、この三つの問題を乗り越えるコツはあるのでしょうか。
アルファベットを使った言語なので、第一にカタカナに頼ることをやめていただきたいところですが、それはやはり厳しいかもしれませえん。
そこで、第一歩として、「カタカナをもう少し上手く使ってみたい」と思います。カタカナで表現できる音は限られているので、これでは1)と2)の問題はどうしても解決できませんが、3)なら少しコツがあります。
まずは、綴り(スペリング)を忘れて、実際の発音を基にしたカタカナを使い、同時にカタカナを使うときに発生する「要らない母音」を最低限にするために少し工夫することです。
デンマーク語も英語も、現代の発音ではなく、何百年も前の発音を基にした綴りを使っていますから、綴りをそのままカタカナに移すと、要らない子音が入ったりします。
例えば、
farve = ファーウ
(ファルヴェではなく!)
デンマーク語の発音の規則には、「母音の後のRは母音のアになる」というのと、「母音の後のVは母音のウになる」というのがあります。
こうして子音が母音になってくれて、子音の連鎖がすくなくなって、日本人にとって言いやすくなってくれます。これは単純に、「子音の連鎖はスペリングを見て思うほど頻繁ではない」というラッキーな事実に救われているだけで、特にカタカナ表記に工夫を入れたわけじゃありません。デンマーク語の子音が母音になるパターンはもっとありますが、これはまた別の投稿でいずれ説明するのかもしれません。
カタカナ表記の本当の工夫には二つあります。
1)最小の悪を選ぶこと:たまには子音を落とそう
子音の間に母音を入れてしまうより、一つの子音を発音しない方が、理解してもらえることが多いです。なぜならデンマーク人も早口ではそんなにはっきりした発音をしないので、子音を落とすのなら、デンマーク人もしかねないミスで、故に理解してもらえるかもしれないからです。
例えばこの次の言葉を見ましょう。それぞれ細かいカタカナ表記と、子音を一つ落とした表記を使います。
ændre
エンドレ
エンレ
この場合、両方少し分かりにくいですが、「エンドレ」は「André」という男の名前にも聞こえてしまうかもしれないのに対し、Dを落とした「エンレ」は話の流れで「ændre」という言葉が出てきて自然な状況なら、そんなに分かりにくくないかもしれません。
※これは、実際に発音されるDを落とした例です。Dがサイレントな場合、カタカナで表記しないのは当然です。
2)語尾とその次の語頭を纏めて表記しよう
hans skjorte
ハンススキョーテ
ハンスキョーテ
この場合、「ス」を一つ落としたバージョンの方がはるかに分かりやすくなります。なぜなら、日本の「す」は様々な環境で母音がなくなり、単純にSという子音だけになってくれますが、「ス」がふたつあれば、その一つの母音を発音してしまうことになってしまいます。上記の「ス」を一つ落としたバージョンで、残りの一個の「ス」は hansとskjorteの両方のSの役割を果たし、また、母音のない発音になってくれて、おかげで「要らない母音」が入ってくることを完全にさけます。
Han elsker dem alle
ハン・エルスカ・デム・アレ
ハネルスカデマレ
それぞれの単語を一つ一つカタカナにすると、デンマーク語のNが、色んな発音が可能な「ン」になり、また、「dem」の語尾のMの後にUという「要らない母音」が入ってしまいますが、文章を纏めてカタカナにすると、語尾のNと次の語頭のEを「ネ」にすることで、デンマーク語のNの正しい発音になりますし、「dem」と「alle」の間に「U」が入ることを避けることができます。
こうしたカタカナの工夫は完璧ではないですが、デンマーク語の発音ミスを大幅減らすチャンスではあります。